書評

2005年生まれです。できるだけ偉そうに書評します。

人類は絶滅を逃れられるのか 知の最前線が解き明かす「明日の世界」 著者 スティーブン・ピンカーほか

 

著者たちが世界的知識人なのでだいぶ読んでいて賢そうな雰囲気を出せる。その一方で各所ユーモアに富んでいて、文字数も少なく、とても読みやすい。僕のような意識高い系がイキるために読む本としては最上級だろう。

 

内容としては、4人の知識人たちが世界の未来が明るいか否かについて議論をする、というものだ。この議題はピンカーの得意分野であった気がする。議論の主催者側の意向が汲み取られる。※僕は他の3人についてはあまりよく知らないので、3人の得意分野でもあるのかもしれない。著書を軽く見る限りそうではなさそうだったが。

 

議論では、データに基づき、未来は明るいと主張するピンカーとリドレーに対して、ボトンが「でも悲しんでる人もいる!」と言っていて、彼は本当に論理的思考ができないのだろうなぁ、と思った。これは僕が科学者好きな人間だから科学的な方の肩を持っているのかもしれない。(が、僕の専門分野は哲学であることも付け加えておく。)グラッドウェルの論はどれも一理あり、かなりの知性を感じた。すぐさま図書館にいってグラッドウェルの著書『天才!』を借りてきた。読むのが楽しみだ。

 

また、4人の悪口合戦にも言及せねばなるまい。彼らは教養たっぷりの皮肉を議論の節々に込めていた。いかにも海外のジョークといった感じで、憧れる。ただ、やはり文字情報として見ると普通にけんかしているだけにも見えた。(現実の議論では笑いが絶えなかったらしい)一流の知識人たちもこんなふうに悪口言ったりするんだな、などと思うと、心が軽くなった。本書のサビはここだったかもしれない。

 

邦題の『人類は絶滅を逃れられるのか』というのは、盛りすぎ。煽りすぎ。完全に釣り。誠実にタイトルをつけるのならば『世界は良くなっているのか』くらいになると思う。

 

余談だが、著者として、アラン・ド・ボトンだけ連名されていないのはどういった事情なのかとても気になった。